Netflixシリーズ「ザ・ファーマシスト オピオイド危機の真相に迫る」の配信が2月5日(水)からスタートしました。
息子の死をキッカケに依存症の怖さに気付き、国を巻き込んで大きな騒動を起こした薬剤師のドキュメンタリーです。
オピオイドがどんな薬かさえ知らなかったので、とても興味深い内容で最後まで楽しめました。
何より、こんな大きな事をやり遂げた父親が格好良かったです。
Netflixシリーズ【ザ・ファーマシスト オピオイド危機の真相に迫る】あらすじ
ニューオーリンズの隣、ルイジアナ州セントバーナードで薬剤師をしていたダン・シュナイダー。
99年4月、ダンの23歳になる息子ダニーが、第9地区という危険なエリアで殺害され遺体が見つかる。
その頃ニューオーリンズでは殺人事件が国内1位、80年代頃からコカイン中毒者が増え、薬を買いに行った若者が相次いで殺されていた。
ダニーもコカインを買いに行き、売人に殺された。
しかし、警察自体が腐敗していたため、どの事件も未解決のままだった。
ダニーのケースも例外ではなく、警察の非情な対応を目の当たりにしたダンは、犯人を見つけるため独自で調査を始める。
報奨金1万ドルを賭け、地道な捜査を続けた結果、事件から5ヶ月後ようやく目撃者の女性シェーンを見つける。
犯人は、シェーンの親友の息子で16歳のジェフリーだった。
ジェフリーは以前、報奨金欲しさから目撃者としてダンに接触し、別の男の名前を上げていた。
第9地区では、密告は許されず4人の子供を持つシェーンは脅迫されながらも裁判で証言し、ジェフリーを刑務所送りにした。
ダニーを殺害した犯人を捕まえ仕事に復帰したダンは、薬剤師でありながら依存症に無知だったことに気付く。
そんなある日、薬局を訪れる若者が皆「オキシコドン」という薬を医者から処方されていることに気付き始めたダン。
オキシコドンとは、パーデュー・ファーマー社が製造した慢性的な痛みを止める薬で、持続時間は12時間、奇跡的な薬として97年頃から人気だった。
不審に感じるようになったダンは職場に録音機を持ち込むようになる。
外傷のない若者にオキシコドンを大量に処方しているクレゲット医師がいることを知ったダンは、ダニーの事件同様、独自で調査を始め、FBIやDEAにも協力依頼をした。
DEAは、ダニーが独自調査を始める1年も前からクレゲット医師をマークしていた。
DEAが内密に捜査をしていることを知らないダンの行動はどんどんエスカレートしていき、クレゲット医師の手下から命まで狙われるようになる。
ある日、ダンが務める薬局に16歳の少女がクレゲット医師からもらった処方箋を持ってやってくる。
ダンが確認すると、そこには致死量レベルのオキシコドンが処方されていたのだ。
ダンは、クレゲット医師に連絡し、大きな証拠を掴み取ることに成功する。
DEAも医師が売人になっていることを連邦検事に訴え続けたが、「医師は神聖な職業」とされていた為、DEAを追い払い続けた。
しかし、ダンが掴んだ証拠によりクレゲット医師は免許停止に、そして2003年に免許を取り消され事実上の廃業となった。
クレゲットは、連邦検事が初めて起訴した医師のうちのひとりだった。
全てが終わったと思われたクレゲット医師の免許剥奪だったが、それは始まりにすぎず、金儲けに目がくらんだ他の医者たちが次々とクリニックをオープンさせ、オキシコドンの処方を続けた。
頭を痛めたダンは、薬剤監視プログラムを導入、それにより医者たちが安易にオキシコドンを処方できなくなった。
しかし、オキシコドンを購入できなくなった依存者たちはヘロインに手を出し、薬物連鎖が続き終わりが見えない状況に陥ってしまう。
そして、2007年にはパーデュー・ファーマー社は有罪判決を受ける。
Netflixシリーズ【ザ・ファーマシスト オピオイド危機の真相に迫る】感想と評価77点
オピオイド薬に全く知識がなかったので、たぶん面白くないだろうなと思いながら観始めたんですけど、ダンのしつこさに引き込まれ最後まで観てしまいました。
ダンの息子ダニーが、コカインを買いに行き殺害された事が全ての発端となります。
息子の異変に気付いてやれず、後悔の念に苛まれた父親の執念が半端ないです。
息子の死を無駄にしたくないと言っていたように、田舎の薬剤師が国までも動かしたんだから、素直にスゴイと思います。
まず、このドキュメンタリーにはダニーの事件に関わった人や、オピオイド薬の関係者などが登場し、当時の状況を語ります。
驚いたのが、ダニーを殺害したジェフリーと、ダンが廃業に追いやったクレゲット医師の登場です。
特に、ジェフリーですよね。
16歳から13年間服役したとは言え、最愛の息子を殺害した男が得意げに、まるで他人事のように当時のことを語ることに関して、ダンや妻、妹は抵抗がなかったのかなぁと。
シュナイダー家が許可したとしても、ジェフリーを出演させようと考えた制作側が信じられません。
結局ダニーが殺害された動機も不明のままなんですよね。
白人がコカインを求めて黒人のテリトリーに入り、大した理由もなく殺されてしまった感じなのです。
なので、父親としては息子が亡くなったことにも意味を持たせてあげたかったのでしょう。
犯人を刑務所送りにできたダンですが、彼を待ち受けていたのは依存性がないと嘘をついてオキシコドンの製造を続けているパーデュー社と、若者にオキシコドンを処方して依存症にしていた医師との長い戦いでした。
オキシコドンで死にかけた方のインタビューもありました。
特に、錠剤を噛むと瞬時にハイ状態となり、あの感覚が忘れられなくなったそうです。
麻薬性鎮痛薬と呼ばれる部類の物のようですが、依存性が高く、過剰摂取で死亡者も多発していました。
癌性疼痛治療なんかにも用いられていたようですが、健康な人間が使うにはあまりにもリスクが高く怖ろしいもののように感じます。
オキシコドンを処方しまくって医師免許取り消しになったクレゲット医師は、結局お金と検査をする面倒くさから手っ取り早いオキシコドンを処方していたんですね。
痛みの原因を探して治療するのが医者だと思うんですけど、2019年のインタビューでも医者になるために相当な努力と時間を費やしたとかブツブツ言うばかりで、あまり反省の色がうかがえませんでした。
クレゲット医師本人もオキシコドンを乱用していたようなので、もしかしたら自分が医師だという自覚も当時はもうなかったのかもしれないですね。
多くの若者を薬物依存に陥れたクレゲット医師は、37件の罪状で起訴、しかし裁判直前に交通事故で重症を負ったため、弁護士が司法取引を持ちかけ、1件のみで起訴となり、刑務所行きは免れ、3ヶ月の保護観察処分となった。
ここまで来るのにダンはDEAを相当やきもきさせたと思います(笑)
DEAとかって内密に行っている捜査を口外できないようなので、ダンからクレゲット医師の件で依頼があったときも大きなリアクションを取れなかったわけです。
それなのにダンは、DEAが売人となっている医師に無関心で協力してくれないと思い込み、行動が更にエスカレートしていき命まで狙われます。
おっちょこちょいな素人がいきなり現れ、DEAやFBIの捜査を邪魔するって映画みたいな話ですが、ダンは最後までやり遂げます。
結局、ダンが手にした証拠が止めをさし、クレゲット医師を廃業に追いやることができました。
このドキュメンタリー、薬物の怖さは勿論のこと、ダンのしつこさと執念にも驚かされます。
オキシコドンを製造していたパーデュー・ファーマー社は、2007年に有罪判決を受けるも販売は止めず、続く4年間の売上は倍増したそうです。
これは、大々的にニュースで報道されるようになり、簡単安全に薬を手に入れられることを知った依存者や若者たちがオキシコドンに走った結果だと思います。
その後、パーデュー社は多数の起訴により破産宣告をしましたが、96年以降のオキシコドンの売上は、350億円以上だったそうです。
ダンがパーデュー者の独自調査を始めた後も、約40万人以上が過剰摂取で死亡。
疼痛薬としてだけでなく、他の違法薬物と同じ使われ方がされていたのがこの数字に現れています。
ダニーの死後、ダンが2001年に始めたことが、10年の時を経て全国に知れ渡ることとなりました。
アニメのキャラっぽい容姿のおじさんダンですが、絶対に諦めない姿勢が格好良いし、こんな大きな事をやり遂げたのは素直にスゴイなぁと思いますね。
映画になりそうな事をやっちゃったおじさんのドキュメンタリーです。
退屈せず、普通に観れる内容のものでしたので、興味のある方は是非ご覧になってみてください!